誘導加熱装置/アルハイパーMAX
生産におけるCO2排出量の約30%を占める
熱に関する工程の一部を脱炭素化
グローバルサプライヤーとして自動車部品の開発・製造・販売を手がける株式会社アイシン(以下、アイシン)さま。「生産」と「製品」の両軸で2050年カーボンニュートラル達成を目指されています。
生産におけるCO2排出量の約30%を占めるのが、ダイカスト、アルミ溶解炉、熱処理といった熱に関する工程です。これらの工程で、徹底した省エネによりエネルギー使用量を減らし、残るエネルギーを再エネ由来の電気や水素に置き換えることができれば、カーボンニュートラルの大きな成果につながります。
その一環としてアイシンさまは、CO2排出量の削減に向けてアルミ溶解炉の電化の開発を進めています。溶解炉は従来ガスヒーターで加熱しており、電化を進めるにあたっては電気ヒーターへの転換が必要となります。しかし、当初導入を検討していた電気ヒーターの1本あたりの出力は、ガスヒーターの半分程度しかなく、溶解能力を確保するためにはヒーターの本数が2倍必要となります。これにより炉自体を大型化せざるを得ず、既存スペースに収まらないという課題がありました。
発想を転換し、電気エネルギーで
「予熱」する工程を新設
そこで、伝熱性能や高出力化に優れ、ガスヒーターの7割程度の溶解能力を確保できる中部電力ミライズが開発した電気ヒーターに着目し、採用を検討されました。それでも、不足する3割程度の溶解能力については、両社で検討を重ねた結果、IHヒーターによる予熱工程を溶解工程の手前に新設することで解決。通常、常温のアルミインゴット(アルミを溶かして型に流し込み固めた塊)を炉に投入し、溶解していましたが、予熱により350℃まで昇温し、アルミインゴットが溶けやすい状態にすることで、不足するヒーターの溶解能力を補いました。IHヒーターは、アルミインゴットの形状の違いで加熱時の温度ムラが発生する問題がありましたが、アルミインゴットの形状に最適なコイル設計や配置とすることで、均一な予熱を実現しています。
「高出力ヒーター」の導入と「予熱工程」の新設により溶解炉の電化への見通しを立てることができたアイシンさま。「従来の電気ヒーターでは実現不可能だった電化を、高出力電気ヒーターとIH予熱システムの組み合わせ提案で実現することができた」と評価いただいております。
電化技術の実用化を加速させ、
グループ会社を含む各工場への活用も視野に
さらに、こうした成果について、「これまで社内では机上検討のみで完了していたアルミ溶解に対する電化の効果を、実機を活用して実証。その結果、将来のScope1の削減に対して電化というアイテムの目途をつけることができた」と、大きな一歩に手応えを感じていらっしゃいます。
現在、アイシン西尾ダイカスト工場での実証実験段階ですが、中部電力ミライズとともに、この技術を実用化し、グループ会社を含む各工場への展開も視野に入れていらっしゃいます。中部電力ミライズにおいても、アイシンさまのさらなる生産効率向上に貢献するため、現状のヒーター以上の高出力化を検討しています。今回の溶解工程の電化によって、将来的にはCO2排出係数の低下とともに、CO2削減に寄与することも期待されます。
今後は、国内外における再エネ導入の拡大をはじめ、エネルギーロス低減の追求や新工法の開発、CO2削減に貢献する新技術の開発・実証の推進、新規事業の創出など、さらなる脱炭素化への取り組みを進めていくというアイシンさま。2050年カーボンニュートラルの実現という未来を見据え、着実に歩みを進めていらっしゃいます。