導入事例

田原市給食センターさま(愛知県田原市)

取材日 2014年10月
田原市給食センターさま(愛知県田原市)

電気に一元化した給食センターとして、全国最大規模の1日8,000食を提供PFI方式により効率的な運営を実現し、災害など非常時への対応にも注力

自校方式とセンター方式が混在し、衛生面や老朽化設備の更新などが課題に

田原市給食センターさまがある田原市は、市町村合併(旧田原町、旧赤羽根町、旧渥美町)により、渥美半島のほぼ全域が市域となっています。合併後の給食については、自校調理方式と給食センター方式が混在しており、ドライシステムの導入や旧給食センターをはじめ施設の老朽化対策や設備の更新が課題となっていました。
そこで、市内の園児・児童・生徒に安全でおいしい給食を提供するために、給食センターの新設が計画されました。
新給食センターに勤務されている市の教育部所属の内藤さまは、旧給食センター運営にも関わっていたとのこと。「施設はかなり古くなっており、夏は暑く、冬は寒く、環境は良くなかったですね。設備や機器にトラブルが起きても、軽微なメンテナンスなどは私たち事務スタッフが工具を手に対応することもありました」と語ります。

新設された給食センターの展望デッキからは雄大な太平洋が望める。

すべての子どもたちに安全・安心でおいしい給食を提供しながら、事業コスト削減を目指してPFI方式による整備・運営を採択。

新しい給食センターの整備にあたっては、民間資金やノウハウなどを活用して公共施設を整備・運営する新しい事業方法である「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式」を、田原市として採択しました。(市ではすでにごみ処理施設の整備・運営において、同方式を採用しています)
給食センター事業はあくまでも公共サービスであり、毎日市内全域の子どもたちに安全・安心で栄養バランスの取れたおいしい給食を、長期的に安定して届けることが最も大きな目的です。給食センターの整備計画では、広大な田原市内全域に点在する保育園、幼稚園、小・中学校合わせて全49施設の子どもたちに対して、一日8,000食(最大調理可能数9,000食)もの給食を提供するためには、民間の事業ノウハウを活用していくことが望ましいと判断されました。
PFI事業会社は、設計・建設した後、センターの所有権を市に移管したうえで、15年間にわたり給食調理・配送などの運営・管理をおこない、市は給食献立メニューの開発・作成や食材調達を担います。

キャンパス内のエネルギーセンターに常駐するシーエナジーのスタッフ
エネルギーの運用状況などは細かく監視。データ化し分析している

新しい献立づくりや食育活動に力を注げられる、というメリットも

田原市給食センターさまの献立づくりや食材調達には、市内の小中学校に在籍する3名の栄養教諭と1名の市の栄養士が携わっており、PFI方式のメリットを次のように語ります。
「以前の給食センターでは、現場の作業オペレーションやスタッフ管理、衛生面のチェックなど、すべて自分たちで実施しなければならず、給食を作るだけで正直手いっぱいでした。
でも、PFI方式になってからは現場のことはほとんど運営会社さんに任せられるので、私たち栄養教諭は新しい献立づくりや栄養管理に時間を掛けられ、献立のバリエーションを増やすことができています。ほかにも、各学校を巡っての食育推進活動にも力を入れられるようになったことは、本当にありがたいですね」。
野菜の一大産地としても知られる田原市の地元産食材を多く取り入れるなど、「食の安全」や「地産地消」にも積極的で、今後はバイキング給食など、新たな取り組みにもチャレンジしていかれるとのこと。

センター2階には新献立の試作などができる調理室も配備

エネルギーが電気に一元化されたことで非常時の早期復旧が可能に。

採択となったPFI事業会社からは、エネルギーを電気に一元化する提案が出されました。過去のさまざまな災害時においてライフラインの中でもっとも早い復旧実績を持つ電気をエネルギー方式としたことは、PFI事業採択のポイントのひとつとなりました。
それに合わせ、調理機器やシステムもすべて業務用電化厨房機器を設置・導入。同時にドライシステムを採用し、高効率で衛生面でも安全・安心な環境を実現しました。
運営会社の現場責任者として同センターの現場を指揮する大坂さまは、電気に一元化された給食センターの運営は初めてとのこと。
「給食センターの運営で一番大切なことは、安全でおいしい給食をきちんと提供することですから、エネルギー源が電気でも蒸気でもその点は同じです。ただ、私自身が電化の施設は初めてでしたので、当社が他県で携わっている電化給食センターなどに研修に行き、機器の使い方や調理オペレーションなどのノウハウは事前に学びました。電気式回転釜の温度調整は蒸気式に慣れていたぶん、少し戸惑いましたが、今では現場スタッフも含めコツをつかみました。火傷や火災になる心配も少なく、放熱も抑えられるため、安全で快適です」。

ずらりと並ぶ電気式回転釜で手順よく調理を実施。輻射熱が無く、換気・空調も整備されているため、快適な作業環境を実現している

電気式回転釜による調理シーン映像

全自動IH式連続炊飯システムは県内唯一。特別洗浄室も備え、万全の衛生対策も

全自動IH式連続炊飯システムは県内唯一
ふっくらとおいしいご飯が次々に炊き上がる
排煙機能も万全の連続フライヤー。調理現場の空気もクリーンに
アレルギー対応調理室では、仕切りを設けて、アレルギー食材の混入を防いでいる

連続フライヤーによる調理シーン映像

非常用発電で1日800食の調理が可能。業務用エコキュートからは災害時にお湯の利用も

田原市給食センターさまは災害など非常時における事業継続にも力を入れていますが、具体的な対策として、非常用発電機(軽油燃料)による自家発電で回転釜1台に電気を供給し、1日あたり800食の調理を可能にしています。また、太陽光発電からは蓄電池を経由して保安電灯盤へ電気を供給できる仕組みを備え、事務エリアの非常照明やコンセント、小型のIHコンロを稼働させられるようになっています。「給食センターには水が常に蓄えられてありますから、食材と電気さえあれば800食を作ることが可能です」(内藤さま)。

さらに、59トンの貯湯量を持つ業務用エコキュートのタンクには独自の取水栓を設置。非常時において取水が可能となり、被災者のケアなどさまざまな用途に対応できるとのこと。
「ボイラーだと非常時に運転できずお湯の確保はできないですが、エコキュートなら常にお湯を貯めていますから、栓を開けるだけですぐに使えるというのは、非常時においても強みだと思います」(大坂さま)。

非常用発電機は軽油燃料で24時間連続運転が可能
大型の貯湯タンクを備え、湯切れの心配がない業務用エコキュート
太陽光発電で作られた電気は、いったん蓄電池に貯めることで非常時にも対応可能
エコキュートタンクに取り付けられた非常取水栓。バルブを開ければ、非常時にここからお湯が出る

エネルギーコストの管理・分析を中部電力がサポート。
環境推進委員会にも参加し、省エネ、CO2削減に取り組む

中部電力としては、田原市給食センターさまに対して、電力実績データを提示し最適なエネルギー運用についてサポートしています。
また、運営会社さまや機器メーカー、施設管理事業者などで組織する環境推進委員会にも参加し、お互いに意見交換をしながら、問題点の把握や解決に向けた改善策などを協議、実施しています。
なお、田原市給食センターさまではデマンド抑制のため、電気の使用ピークが重ならないように、午前の調理時間帯と午後の洗浄時間帯のタイムスケジュール管理などを工夫しているそうです。

食器やコンテナの洗浄には電気を多く使うため、デマンド抑制を考慮してタイムシフトを組む
エネルギー使用量、設備稼働状況などが「見える化」されたリアルタイムモニタ
取材こぼれ話

2階には見学エリアを設け、給食センターを疑似体験!

田原市給食センターさまでは2階部分に見学エリアを設けています。ここでは調理室や炊飯室、洗浄室など給食センターの作業の様子をガラス越しに見ることができるほか、食育展示コーナーでは現場と同じ手洗い場やエアシャワー、電気式回転釜に触れて体験することができます。
また、研修室も備えており、子どもから大人まで幅広い世代の人たちに食の情報を発信しています。

2F見学エリアからは、ガラス越しに給食調理の様子が見渡せる

毎日、田原市内の子どもたちにおいしい給食をつくり、届けている田原市給食センターさま。広大な市内をカバーする唯一の給食センターのため、安定した施設運営が何よりも大切です。中部電力では、今後も最適なエネルギー運用の提案や最新情報の提供などを通じて、田原市給食センターさまをサポートし、おいしい給食で子どもたちの笑顔がもっと増えるようお手伝いしていきたいと考えています。

駐車場内の照明にも自然エネルギーを有効利用

導入システム

電化厨房設備機器 電気式回転釜
スチームコンベクションオーブン
連続フライヤー
連続式IH炊飯機
蓄氷型真空冷却機
省エネ型システム食器洗浄機
空調設備機器 非蓄熱式空調機
給湯設備機器 業務用エコキュート
その他 太陽光発電システム
風力発電システム

(注)本記事は2014年に取材したものであり、取材対象者、施設情報などはその当時の情報です。

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