日本平ホテルさま(静岡県静岡市)
「風景美術館」をコンセプトに、富士山
を愛でる環境配慮型の老舗ホテル
省エネ性を向上させ、売上高光熱費率を
大幅削減
建て替えには環境配慮を最重視。最高クラスの認定取得を目指す
日本平ホテルさまは、開業して半世紀近くになる静岡県を代表する老舗ホテル。世界文化遺産にも登録され大きな注目を集める富士山と三保の松原を臨める好立地にあります。旧施設の老朽化が進行していたことに加え、静岡市が推進する「日本平公園整備事業」における文化・交流ゾーンに組み入れられたことを機に、「風景美術館」をコンセプトに2012年9月全面建て替えされました。
静岡県では地球温暖化防止条例として、「2,000平方メートル以上の建築物の新築、増改築を行おうとする建築主に、建築物環境配慮計画書の提出および当該建築物に係る工事完了の届出を義務付け」ており、その中で建築物環境配慮制度を制定しています。これは、評価シート「CASBEE(キャスビー)静岡」を用い、多岐にわたる項目チェックにより、建築物に対し環境負荷低減の格付けを行なっている公的な制度。日本平ホテルさまでは、計画当初から最高ランクの「Sクラス」認定を目指して取り組み、静岡県のホテルとしては初めて認定を取得されています。
また、2017年12月には、国が推奨する「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」にて最高ランクの☆☆☆☆☆を取得され、2019年12月には自然と生きる環境共存型ホテルの取り組みにより「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を受賞されました。
「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」について詳しくはこちら
環境性、省エネ性、安全性などさまざまな観点から、エネルギーを電気に一元化
日本平ホテルさまでは、新築するホテルの環境負荷低減を推進するにあたり、熱源を電気に一元化することを検討されました。すでにグループ内で運営する複数のゴルフ場の給湯システムに、業務用エコキュートを導入している実績から、省エネ性の高さやランニングコストの低減、ボイラーレスによる安全性などを実感されていたこともあり、新ホテルについても電気システムの全面的な導入が決定しました。
基本構想段階からホテルの設備・機器面の管理責任者として携わられた施設部部長の池谷さまは、電化システム採用についてこう語ります。「やはり環境負荷低減、省エネ性はポイントでした。また、厨房環境の改善やボイラーレスによる管理業務の削減、火災リスクの少なさも利点であると。高機能・高効率な電気式の機器が新たに揃ってきていることも採用の後押しになったと思います」。
例えば、空調面においては客室用に高効率な空冷ヒートポンプ冷暖フリーマルチを採用するなど、省エネ性と快適性のバランスを高次元で取られています。
クールヒートトレンチで地熱を利用、空調への外気負荷を軽減
空調設備で見逃せないのは、ホテル地下に全長180mにわたって設置されたクールヒートトレンチ(給気風洞)。一旦外気をここを通過させることで、地熱を利用して温度を安定(夏は下げ、冬は上げる)させてから、空調室外機に取り込んでいます。これにより、外気をそのままの温度で空調室外機に投入する場合に比べ、省エネ性と環境負荷低減に大きく貢献するのです。年間平均で3℃、夏場には最大で6℃もの外気の負荷軽減効果があるとのこと。実際に取材に伺ったのは盛夏でしたが、トレンチ内は空調が無いにもかかわらず、涼しい風が常に吹いており、その効果の高さが実感できました。
給湯には業務用エコキュートを導入し、大量で不定期な給湯需要にも対応
給湯設備は、高効率な業務用エコキュートを導入しホテル全体の給湯に対応しています。ホテルの稼働率は季節や行事などにより大きく変動するため、給湯需要もそれに合わせて動きます。最大需要にも十分耐えられる貯湯量47トンを備えたタンクを設置し、割安な夜間電力でランニングコスト削減を図るほか、低需要時での無駄な運転や故障時のリスクを抑えるため、ヒートポンプユニットの運転台数を最適に制御しています。
また、ボイラーレスにより火気が無くなったことで安全性が高まったこと、機器の保守管理負担が大きく軽減したことにもメリットを感じていらっしゃるそうです。
ライトウェル採光や雨水利用など、自然エネルギーも積極活用
日本平ホテルさまでは、自然エネルギーも積極的に活用し、環境負荷低減に努めています。
例えば、「ライトウェル採光」は、屋上に取り付けられたミラーの反射を利用して自然光を館内に採り込む仕組み。熱源や動力は不要で、縦型の反射ダクトを経て、4フロアにわたって客室や廊下に柔らかな明るさを届けています。照明費の削減効果のほか、廊下部分のダクトは自然換気にも利用され、空調負荷低減にも役立てています。また、井水や雨水を敷地内植栽の散水に利用する取り組みなども行なっています。
また、ボイラーレスにより火気が無くなったことで安全性が高まったこと、機器の保守管理負担が大きく軽減したことにもメリットを感じていらっしゃるそうです。
すべての電気系統を一元管理し、エネルギー利用状況の把握が容易に
防災センターでは、セキュリティー監視のほか、ホテル内の空調、給湯、照明に関わるすべての電気系統を一元管理しています。旧施設では空調の温度コントロールは各現場での対応でしたが、現在は宴会場、客室、厨房など館内すべての空調の遠隔制御が可能。また、給湯システムについては、ホテルの稼働状況を把握して貯湯量や運転スケジュールの管理も担っています。さらに館内照明についてはゲスト利用エリアをすべてLED化しプログラム制御するなど、エネルギーの効率的な利用を実現しています。
「熱源が電気のみになったことで、エネルギーコストの管理と集計が一本化でき、目標設定や状況把握が大変しやすくなりました」(池谷さま)。
すべての調理場を電化厨房に。レストランのオープンキッチンはお客さまにも好評
ホテル内には宴会料理に対応する大規模な調理場のほか、オールデイダイニングと日本料理・寿司処にもそれぞれ個別厨房があります。新築に伴い、すべてを電化厨房にし、衛生的で快適な環境を実現しました。導入にあたり当社では、先行導入している他ホテルへの見学をご案内するとともに、電化厨房の体験調理セミナーも独自に開催しサポートさせていただきました。
オールデイダイニングの料理長はこのように語ります。「調理場というのは火を使いますから、ホテルといえどもどこも作業環境は厳しいです。空調が入っていても夏場は40℃を超えることもあり、汗を大量にかいたまま冷凍庫に入ることもあり、体調を崩す者もいます。しかし、電化厨房になってからは本当に快適です。空調の設定温度で厨房内の室温がキープされていますので作業効率も上がりますし、スタッフのモチベーションも高いですね」。 レストランのオープンキッチンはお客さまからも中が見渡せるつくり。天井が高く、明るく開放的なキッチンはクリーンなイメージで好評とのことです。
売上高光熱費で約2%削減を実現。エネルギー消費量も約21%削減へ
売上高に占める光熱費の割合は、旧施設が年平均5.15%であったのに対し、リニューアル後の10ヶ月平均では3.06%で推移しており、約2%の削減効果が現れているそうです。日本平ホテルさまでは年間目標値を3.6%に設定されているため、それよりも高い数値を実現しています。
また、省エネルギーという面では、熱源が従来方式(電気・重油・LPG)の同規模のホテルと比較し、エネルギー消費量で約21%削減を想定されています。
世界クラスの会議が開催、出席した要人たちからは感嘆の声
2013年1月末から3日間の日程で、日本平ホテルさまを会場に「第24回国連軍縮会議」が開催されました。この会議は、アジア・太平洋地域を中心に世界各国の政府高官や有識者、マスコミ関係者が参加して開催されているもので、1989年から毎年夏頃、日本の主要都市で開催されています。今回はホテルから富士山の絶景が最も美しく見られる時期に敢えてスケジュールを合わせ、異例の冬期に開催。その甲斐もあり、出席した要人たちからはその美しさに感嘆の声が上がったそうです。
また、客室から眺められる夜景は、微細な光が45%、闇が55%で視野を独占します。この比率は「夜景の黄金比率」と呼ばれ、日常と非日常、自然と人工の世界の狭間に身を置かせて創造力を喚起させ、深い記憶として刻んでくれるとのことです。
日本平ホテルさまは、これからも訪れるすべてのお客さまに対し、安全で安心なホテルライフを提供するとともに、上質な環境を提供しながら、さらなる省エネ性や効率性を追求していくお考えです。
当社では今後もさまざまなご提案を通じて、最適なエネルギー運用をサポートさせていただきます。
導入システム
空調設備 | 業務用空調システム 日立アプライアンス RHMNP1500AVB×1台 他42台 |
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厨房設備 | テーブルレンジ 三洋電機 10台 |
クッパーズブッシュ 2台 | |
立体炊飯器 コメットカトウ 2台 | |
スチームコンベクションオーブン 北沢産業 3台 | |
フジマック 3台 | |
回転釜 三和厨理 2台 | |
スチームケトル 三和厨理 1台 | |
フライヤ 三和厨理 5台 | |
三洋電機 1台 | |
グリドル 押切電機 2台 | |
ラックコンベア洗浄機 北沢産業 4台 | |
食器消毒保管庫 北沢産業 1台 | |
給湯設備 | 業務用エコキュート 三菱電機 QAHV-N560C 10台 |
- 導入事例