「静岡Greenでんき」
=地産地消エネルギーに共感
毛利さん2023年に「静岡Greenでんき」を導入された経緯を教えてください。
丸山(雄)さん導入の背景を説明するには、当社が海外に進出した20年前までさかのぼる必要があります。当時、茶商としてなによりも日本茶のポテンシャルを信じていた当社は、世界のマーケットにその魅力を広めたいと考え、足掛かりとして海外の展示会に出展をはじめました。
毛利さん周囲の反応はいかがでしたか?
丸山(昌)さん同業者からは「海外では紅茶やコーヒーが主流。日本茶なんて売れるわけない」と笑われました。
丸山(雄)さんそのような声もありましたが、まずは日本茶と親和性が高いと見込んだ、紅茶を飲む習慣のある欧州を中心に商品を売り込んだのですが、手応えのない時期が続きました。苦戦をしいられる一方、強く印象に残ったものがあります。それは欧州企業や消費者の環境意識の高さでした。
丸山(昌)さん展示会で当社のブースに来られた欧州の消費者に茶葉の品質を保つため冷蔵庫で保管していることを話したところ、「なぜわざわざ冷蔵庫に保管するのか?」と怪訝な顔をされたのです。
毛利さんどういう意味でしょうか?
丸山(雄)さん世界的にはお茶といえば紅茶が主流で、温度管理が重要な緑茶は一般的でないことが背景にあると思います。電気は自然エネルギー由来のものもありますが、火力発電が主流です。つまり冷蔵庫を使うということは、化石燃料を燃やすことにつながります。こうしたなかで「環境負荷と品質保持のバランスが今後必要になってくるのではないか」という趣旨だと思います。
丸山(昌)さんほかにも欧州ではマイボトルを持ち歩く習慣も定着しているなど、さまざまなシーンで日本との違いを感じさせられました。
丸山(雄)さんペットボトル飲料にはデポジット(預り金)が加算されており、容器を返却することで返金されるんですよ。日本で言うと、酒屋さんのビール瓶みたいなものですね。
毛利さん欧州の消費者の環境意識の高さを感じさせるエピソードですね。
丸山(昌)さんそうですね。お恥ずかしながら当時、ビジネスと環境を両立させるような思想は高いレベルでは持ち合わせていなかったため面食らいました。そういった経験から、世界に日本茶の魅力を広めるためには、品質だけではなく、我々企業の環境に対する意識の変革、取り組みも同じだけ必要なのだと実感しました。そこでまずは、足元の国内でも環境に対してできることから取り組みをはじめました。
丸山(雄)さん例えば、太陽光パネルを設置することでエネルギーコストを圧縮したり、照明をLEDに切り替えたり、旧型の設備を順に省エネタイプに更新したり。さらに、こまめな消灯など、大小さまざまな取り組みを20年かけて続けてきました。
丸山(昌)さんさまざまな取り組みをおこなう中、いつも営業に来られる中部電力ミライズの担当者さまから提案いただいたのが「静岡Greenでんき」でした。
毛利さん導入の決め手となったのはなんですか?
丸山(昌)さんまずは静岡の水力発電所由来の電気であること。当社は日本最大の茶葉の産地である静岡とともに歩んでおり、静岡の豊かな自然で育まれた水を利用した電気を使って、地場産業であるお茶づくりに貢献できるというのは理想でもありました。そしてCO2フリーであり、脱炭素の取り組みを続ける当社にとって最も投資に値するサービスであったことから即断即決でした。
毛利さんエネルギーの地産地消ですね。でも、コスト面は気になりませんでしたか?
丸山(昌)さんもちろん営利企業ですので、コストは気になります。
丸山(雄)さんただ、CO2排出ゼロを実現して製品の単価が多少上がったとしても、欧州のマーケットで勝負するには確実に超えなければいけない壁であり、この取り組みは欧州でも評価されるという自信もありました。
丸山(昌)さん現在は静岡県内3施設でCO2フリーの電気を契約しています。
毛利さん導入してからおよそ1年となりますが、どのような変化がありましたか?
丸山(昌)さん導入して早速、静岡県内の茶製造業としては初めての取り組みということで静岡新聞さんに取りあげていただきました。また、自社としてもより脱炭素に取り組む企業として、世間にPRを強く打ち出せるようになりました。
丸山(雄)さんまた、これは確実に言えるのではというところで、総輸出量が400トンを超える当社に対する取引先からの視線が変わってきているということ。今後、欧州の取引先を中心に、当社に対し環境ポリシー(環境への取り組みを評価される)の調査がおこなわれるでしょう。そこで大きな力を発揮するのが、「静岡Greenでんき」だと思います。
毛利さん御社の展望について教えてください。
丸山(雄)さん国内に軸足を置きながらも、今後ますます欧州のマーケットへの売り込みを加速させる予定です。それは同時に、当社が強く想いをもつ「日本の伝統文化である日本茶の魅力を伝え広めること」につながると信じています。
丸山(昌)さんこれを実現しようとしたときに、課題となるのが2点あり、それは地場産業の活性化と製造工程における脱炭素化です。
丸山(雄)さんまずは地場産業の活性化についてお話すると、国内のお茶の購入金額は、直近で全盛期の3分の1以下まで減少し、それと比例しお茶農家の収入も減少するという切実な問題を抱えているのです。
丸山(昌)さんお茶農家なくしては、当社の事業はいうまでもなく、茶業という日本の伝統文化も潰えてしまいます。そこで当社では、お茶農家が持続可能な生産を続けられるよう、「茶業版フェアトレード」を掲げ、推進しています。
毛利さん具体的にはどのようなことですか?
丸山(雄)さん適正な価格での仕入れのほか、お茶農家にリアルな市場ニーズを共有することで、生産ロスを減らし、よりよい茶葉づくりにつなげています。その結果、静岡の地域産業が活性化され、まさに三方よしの取り組みと自負しています。
毛利さん御社もつくり手も地域も、みんなハッピーですね。
丸山(昌)さんそうですね。環境に取り組む企業として海外への売り込みを加速させつつも、その基盤となる地場産業を支え続けることが当社の使命だと感じています。
丸山(雄)さんそして次に製造工程における脱炭素化です。「静岡Greenでんき」の契約など、さまざま取り組んできた当社ですが、現在最重要課題と捉えているのが、生産設備の燃料転換です。
丸山(昌)さん茶葉の製造工程では、重油を使うのが一般的ですが、今後はCO2の排出をでき得る限り抑えた茶葉の生産を実践していかなければならないと考えています。
丸山(雄)さんそこで、製造工程に使う機器の電化やCO2を排出しないエネルギーの利用含め、機械メーカーと共同開発などにも取り組んでいきたいと考えています。
毛利さんそれはワクワクする取り組みですね。これまでさまざまなことに取り組まれてきた丸山製茶さまが、フロントランナーとして、これから脱炭素に取り組む企業へ、何かアドバイスできることはありますか?
丸山(雄)さんお客さまから選ばれ続けるためには、環境問題への取り組みは不可欠です。まずは、社内で照明をLEDに切り替えたり、従業員の意識改革のためマイボトル持参を推奨したりと、身近で比較的着手しやすいところからはじめてみてはいかがでしょうか。
丸山(昌)さんそれでも、企業活動によって排出されるCO2をゼロにすることは困難です。だからこそ設備導入不要&最短2ヶ月で導入できる「Greenでんき」は、脱炭素化のピースとしておすすめです。
丸山(雄)さん当社は茶業界を牽引するグローバル企業として、またフロントランナーとして、地球環境に配慮した経済活動を約束し持続的な発展を続けてまいります。
毛利さん貴重なお話をありがとうございました。