Story
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地域から始まる脱炭素。
中小企業が拓く持続可能なビジネス
世界規模での取り組みから、身近な地域での動きまで、「脱炭素」の広がりは着実に進んでいます。今回は、地域という視点から脱炭素を捉え、特に中小企業の皆さんにとって、なぜ今「地域脱炭素」が重要なテーマとなっているのか、その可能性について見ていきましょう。
今回のコラムで学べること
- 地域脱炭素ロードマップの具体的な施策と目標
- 脱炭素による地域経済効果と雇用創出の可能性
- 中小企業における実践事例とビジネスチャンス
Chapter 01 地域脱炭素ロードマップの具体的な施策と目標
地域脱炭素ロードマップが描く未来像。
自治体と企業の協働
日々加速する世界の脱炭素への潮流。その動きは気候災害への危機感や国際的なルール作りなど、様々なニュースとして私たちの耳に届きます。しかし、この大きなうねりの中で、実際に行動を起こす担い手としての「地域」と「企業」の役割が重要になってきます。特に中小企業の多くは地域に根差し、地域社会と密接に関わりながら経済活動を営んでいます。
地域を地盤とする企業は業種を問わず、「地域」と「企業」の両面を兼ねて取り組むことができ、地方自治体とともに「地域脱炭素」をリードする最も重要なアクターといえるでしょう。
2021年、関係大臣と自治体代表からなる国・地方脱炭素実現会議は「地域脱炭素ロードマップ」をまとめました。このロードマップでは地方自治体と地元企業・金融機関が中心となり、国の支援を受けながら地域資源を活用し、地域課題の解決と魅力向上を実現させる姿が描かれ、脱炭素と地方創生の同時達成を目指しています。
このロードマップの核となるのが「脱炭素先行地域」の創出。2050年のカーボンニュートラルを目標に、家庭や業務などの民生部門、移動や運搬などの運輸部門からのCO2削減を進め、地域の個性や得意技を活かした脱炭素化を推進するというものです。
また環境省は、「人口1000人の脱炭素先行地域で民生部門のCO2ゼロを実現した場合」の経済効果を試算。初期段階で40~100億円、毎年3~5億円の経済効果に加え、80~180人の雇用創出が見込まれるとしています。これは企業による脱炭素への取り組みが、地域経済の活性化と暮らしの質の向上につながることを示しているといえるでしょう。
これらの流れを受けて、2050年に向けたCO2排出量ゼロへの取り組みを表明する「ゼロカーボンシティ宣言」も広がり、全国の3分の2にあたる1122自治体(2024年9月末時点)が宣言に踏み切っています。
地域脱炭素の潮流の中で、中小企業が傍観者であり続けることにメリットはないでしょう。むしろ積極的な参画により、企業イメージや信頼構築はもとより、中期的なコスト削減、人材確保、資金調達、他社との連携など、様々な可能性が広がっていきます。とりわけ地域に根ざした企業には、自治体や住民との連携という大きなアドバンテージがあるのです。
Chapter 02 脱炭素による地域経済効果と雇用創出の可能性
広がるビジネスチャンス。
中小企業による具体的な実践例
中小企業が参入できる脱炭素ビジネスの領域は実に幅広く、様々な可能性を秘めています。住宅の断熱・省エネ対策から、再生可能エネルギー(太陽、風力、小水力、バイオマスなど)による電力調達まで。製造現場での熱・冷熱利用の効率化、資源の再利用と循環、物流の低炭素化といった取り組みに加え、緑化による吸収源対策、持続可能な一次産業の実現、エコツーリズムの展開なども。さらには環境技術やデジタル技術の開発、コンサルティングやシステム開発まで、活躍の場は多岐にわたります。
具体的な取り組みも着実に進展しています。国内では、アルミ廃棄物から水素を製造する取り組み(富山県)や、カキ養殖で発生する廃棄イカダをバイオマス小型炉の燃料として活用する試み(岡山県)が始まっています。
海外に目を向ければ、リサイクル可能なピザ配達容器の開発(スイス)や、オリーブオイル製造の廃棄物からバーベキュー用固形燃料を生み出す取り組み(ギリシャ)など、中小企業による革新的な脱炭素への挑戦が加速しているのです(注1)。
(注1) 出典:海外事例は 「株式会社 宣伝会議/環境ビジネス」 より引用
Chapter 03 中小企業における実践事例とビジネスチャンス
未来を見据えた新展開。
地産地消型カーボンサイクルの可能性
日本でも一歩先を見据えた取り組みが始まっています。地域内でCO2やバイオマスを炭素源として活用し、畜産や製造業に利用する地産地消型のカーボンサイクルへの挑戦もその一つ。医療・福祉・サービスなど幅広い分野を含む企業のサプライチェーン全体で、脱炭素化の動きが広がっています。各企業の技術と経験を活かしたアイデアを“種”とし、新たなビジネスチャンスへ育っていくことに期待が持てるでしょう。
CO2削減に向けた取り組みは、経済循環、人口減少、災害対策、健康・環境保全など、地域固有の課題解決とも密接に結びついています。地域社会と歩調を合わせることで、地域脱炭素は確かな実効性を持ち、持続可能なビジネスの実現につながっていくはず。そして、地域に根ざした一つひとつの企業による取り組みこそが、日本、そして世界の目標達成への確かな道筋となるのです。