Story
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日本の温暖化政策の現在地。
企業が知るべき最新動向とは?
世界各地で発生する干ばつ、山火事、洪水といった気候災害や、脱炭素に関する国際的ルールについては、ニュースを通じて私たちの耳に届きやすい情報です。しかし、日本がどのような取り組みをおこなっているかにも注意を払うことが重要でしょう。なぜなら、実際に私たち国民や企業に対して求められる取り組みは、日本の温暖化政策に基づくものだからです。
今回のコラムで学べること
- 日本の温暖化政策に対する姿勢
- 2030年・2050年に向けたCO2削減目標
- 企業に影響を与える新しい取り組み
Chapter 01 日本の温暖化政策に対する姿勢
未来への責任ある一歩。
日本の温暖化対策の3つの柱
日本政府による温暖化対策の取り組みは、以下の3つの柱で構成されています。(1)に基づいて(2)が策定され、それを推進する組織として(3)が設置されるという関係性があります。
(1)1998年の地球温暖化対策推進法(以下「推進法」)
気候変動への国際的な対応を反映するため、1998年にこの法律が制定されました。 その目的は、国内政策をより効果的に推進すること。 成立以来、時代の要請に応じて改正が続けられています。
(2)地球温暖化対策計画
推進法に基づいて具体的な対策が描かれた政府の総合計画で、2016年に策定されました。主な内容には、排出削減と吸収に関する事項(再エネ・省エネ、分野別の取り組みなど)、分野横断的な取り組み(経済的手法)、地域脱炭素に関する事項などが含まれています。2021年には脱炭素に向けた投資やイノベーションを加速する内容が盛り込まれました。
(3)地球温暖化対策推進本部
2005年に推進法に基づく機関として、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するために内閣に設置されました(内閣構成員と同じ)。
Chapter 02 2030年・2050年に向けたCO2削減目標
世界は脱炭素の大競争時代へ。
日本の挑戦的な目標設定
2021年に策定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」では、部門別のビジョンと取り組みの項目を明示。脱炭素に向けた6つの視点のひとつに「経済と環境の好循環の実現」を掲げ、以下のように言及しています。
「もはや環境対策は経済の制約ではない。積極的に温暖化対策をおこなうことで、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につなげるという発想の転換が必要である」
世界が脱炭素の大競争時代に突入したことを認識し、日本は野心的で高い目標を設定。NDC(国が決定する貢献:Nationally Determined Contribution)として国際的に削減目標を約束しました。
具体的には「2030年で46%削減(2013年度比)、さらに50%削減に向けて挑戦し、2050年までに実質ゼロにするカーボンニュートラル、つまり脱炭素社会の実現を目指す」というもの。全ての締約国はこのNDCを5年ごとに提出し更新する必要があります。次回提出は2025年で、2035年目標がどのように示されるかが注目され、66%削減という提案も出ています。
Chapter 03 企業に影響を与える新しい取り組み
変革の時代の到来。
企業に影響を与える新しい取り組み
最後に、世界の動向に呼応した日本の新たな取り組みを2つ紹介します。
ひとつ目は、2022年に改正推進法に基づいて設立された株式会社脱炭素化支援機構(JICN:Japan Green Investment Corp. for Carbon Neutrality)。国の財政投融資と民間からの出資を原資としたファンド事業をおこなう株式会社で、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素事業にリスクマネーを供給する役割を担います。これにより、脱炭素に必要な資金の流れが拡大することが期待されています。
もうひとつは、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)の推進。経済産業省がまとめたGXリーグ基本構想に賛同する企業の参画を募る取り組みも開始。2024年度現在では700社を超える企業が参加し、民間企業の取り組みを牽引する大きな流れとなっています。さらに2023年には「GX推進法」が成立し、これに基づき「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が策定されました。
これら一連のGXの取り組みの中で特に注目されるのが、カーボンプライシング。その一つが炭素に価格をつけ、企業に排出枠を設定し、削減が困難な場合は排出枠に余裕のある企業から余剰分を購入する排出量取引の仕組みです。日本では2026年の本格導入に向けて、2025年の法整備の準備が進められています。この仕組みでは、自社の排出量を的確に把握し、その情報を開示することが重要になるでしょう。
こうした動きは、パリ協定を契機とした世界のうねりを受けたものです。日本でも政府と民間と市民が連携して、脱炭素社会・脱炭素経営にシフトしていく―、まさに今その変化の中にあるのです。