Story 02 脱炭素:
サイエンスからビジネスへ

脱炭素イメージ図

最近、異常気象のニュースをよく耳にしませんか?これらは地球温暖化の影響かもしれません。世界中の科学者たちが気候変動の研究を進め、企業も対策に乗り出しています。今回は、サイエンスとビジネスの視点から、脱炭素の動きについて見ていきましょう。

今回のコラムで学べること

  • 気候変動の現状
  • 企業の脱炭素への取り組み
  • 私たち企業にできること

Chapter 01 地球温暖化。サイエンスの観点から

気候変動の原因が
人間活動にあることは疑う余地がない

世界気象機関(WMO)は今年1月、2023年の世界平均気温が観測史上最も高く、産業革命前より1.45℃上昇したと発表しました。1.0℃を突破したのが2015年、それからわずか8年で1.5℃に近づいたことになります。私たちの身近なところでも、いつも獲れる魚が獲れない、雷が最近多いなど、今までと何か違うと感じることもしばしばです。20年くらい前には南極の氷はとけず、海水蒸発でむしろ増えるとされていましたが、予想に反して早い速度でとけています。

気候変動のイメージ図

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という機関をご存じでしょうか。世界の科学者が連携して科学の目で地球の気候変動を捉えることを目的に、1988年に国連環境計画とWMOにより設立されました。世界中の研究成果を結集して概ね5~6年ごとに評価報告書をまとめています。気候変動の原因が人間活動にあるかについて、2001年の報告書では「可能性が66%以上」でしたが最新の2021年版では「疑う余地がない」という表現になりました。

雲のイラスト
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会議のイメージ画像
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Chapter 02 サイエンスから経済へ

温暖化対策への投資コストは、
損害コストよりもはるかに小さい

ここ20年の気候科学の発達と成果によって、これから起こり得ることの予測精度も格段に高まっています。サイエンスが今日の世界的な脱炭素の潮流の言わば起動役となっていると言えます。 それを受けて政治が動きました。G7やG20を中心に2021年以降相次いで脱炭素に向けた大きな目標が宣言されています。G7は元々石油危機対策でできたことを考えると、時代の流れを感じます。

工場のイラスト
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一方経済界は、サイエンスの動きを一早く取り入れて動き出します。2006年に発表されたスターンレビューという報告書も契機となりました。「対策への投資コストは、取らずに失う損害コストよりはるかに少ない」と英国経済学者のスターン博士は提起しました。
実際、気候変動は私たちの経済に直結します。気象災害が原料調達や操業自体に影響してサプライチェーンがつながらないリスクです。

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2006年に国連はPRI(責任投資原則)6原則を提唱し、投資にESG(環境・社会・ガバナンス)の視点を組み込む動きが広がっていきます。日本でも金融庁が2014年に責任ある機関投資家に向けた日本版スチュワード・シップコードを公表し、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名してESG投資が加速しました。もちろん2015年に国連が採択したSDGsもこれらを後押ししています。2023年のPRI署名数は世界で5,391機関、ESG投資額は世界で121兆ドル(2021)、日本で538兆円(2023)です。サイエンスが起動させた脱炭素は、今やビジネスがその駆動力となっているのです。

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世界の地域別ESG投資額変化

世界の地域別ESG投資額変化のグラフ

出典:MRI三菱総合研究所ウェブサイトより引用

鳥のイラスト
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Chapter 03 ピンチをチャンスに。持続可能な企業へ

気候変動対策はもはや社会貢献ではなく
自己の存続のために必要

ESGの視点を一言で表せばサステナビリティ(持続可能性)です。つまり持続可能でない経営はリスクになるということです。それを逆手に取って経営に新たな考えを取り入れて脱炭素に取り組むことはチャンス(収益機会の開拓)でもあります。

製品やサービスの品質を確保する、資源の安定調達や需要を確保する、企業間相互に加えて社会的な信頼を得るといったことは、様々な外部環境の変化に対応して経営し続ける力の証しでもあります。「気候変動対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」(山崎大ほか(2022)「世界はなぜ脱炭素に向けて舵を切ったのか?」, 水文・水資源学会誌, Vol.35, No.3)という言葉が的を射ています。

気候変動対策イメージイラスト
木のイラスト
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まずは自社の現状を知り、できることから始めることが大切です。第一歩として環境への取り組みを経営戦略に取り込む姿勢と、それを外に向けて発信することが重要になってくるでしょう。

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鳥のイラスト
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