新工場「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」
による環境経営の推進

標高3,000m級の山々が連なる北アルプスを背景に、豊かな自然が育まれている長野県大町市。2021年5月この地に、飲食大手のサントリー食品インターナショナル株式会社(以下、サントリー)さまが、年間1億ケースを販売する「サントリー天然水」の新工場を稼働させました。「人と自然と響きあう」を企業理念に掲げるサントリーグループでは、持続可能な社会を次の世代に引き継ぐために、「環境ビジョン2050」を掲げて「自然環境の保全・再生」と「環境負荷低減」の両面から積極的に活動。

サントリー食品インターナショナル株式会社さま

その達成に向けて「2030年目標」を定め、グループ全体で「水のサステナビリティ」「気候変動対策」を柱に、グローバルに環境経営を推進しておられます。本工場は、その取り組みの一環であり、今後の工場のあり方を指し示すものと言えるでしょう。
脱炭素社会を見据えて、電気や水、熱を消費する工場などの現場が大きく変わりつつあります。今回、工場のエネルギー供給面を、数多くの事業所や工場の脱炭素コンサルティングをおこなってきた中部電力グループが担当。サントリーさまが新工場のテーマとして掲げた、「脱炭素」「地域との共生」「省人化」という課題は、サントリーさまと中部電力グループのこれまでの知見や実績を組み合わせ、最大限に活かすものとなりました。

サントリー国内初の
CO2排出量実質ゼロを
果たすために

企業が進める脱炭素として、使うエネルギーを減らす省エネや、太陽光などを活用して自分たちで再エネ電気を発電、自社が使うエネルギーを再エネ由来に切り替えるなどの事例があります。担当者さまも、「CO2排出量実質ゼロを達成するためには、省エネ設計によりエネルギー使用量を最小限に抑えながら、同時に再生可能エネルギーを調達して最大限活用していく必要がある」と語っており、本工場は複数の脱炭素施策を戦略的に組み合わせ、CO2排出量実質ゼロを達成することができました。

工場の生産設備を支えるのは、ボイラー、チラー、コンプレッサーなどのユーティリティ設備です。これら設備は利用するエネルギーが大きく、効率運転が課題に。そこで本工場では、省エネ性能の高い機器を採用するだけでなく、エネルギー効率が最も高くなる運転範囲で自動制御させるなど、最新技術を駆使して、省エネおよび設備の長寿命化を図っています。
複数台の設置となるとコストがかかりますが、設備を中部電力グループが所有し、サントリーさまが使用料を払う仕組みとすることで、初期費用を抑えながら省エネを実現されました。また本工場で使用する電気は、PPAモデルでサントリー最大規模となる太陽光パネルを敷地内に設置し、工場で使用する電力にあてるほか、不足する分は中部電力グループを通して主に水力発電を由来とするクリーンなCO2フリー電気を調達されています。

CO2排出量実質ゼロを
社内外チーム一丸となり達成

このような先進的かつ徹底した脱炭素の取り組みは、自社だけで簡単に成し遂げられるものではありません。電気、水、熱、人、あらゆる面で省資源と高効率に思考をめぐらし、自社と同じ熱量で総合的に寄り添える“脱炭素のコンサルタント”が必要です。
担当者さまは、「CO2排出量実質ゼロの達成においては、エネルギー使用量を削減したうえで再生可能エネルギーに代替することが重要です。そのため、省エネ設計に徹底的に拘りました。

省エネの方策を積み上げていく過程は、気が遠くなるようなものでしたが、CO2排出量実質ゼロを「何としても達成する」という強い意気込みのもと、社内外がチーム一丸となって必死に取り組んできました。エネルギー調達については、エネルギー会社や電力会社と何度も検討を重ね、サントリー清涼飲料工場で最大規模の太陽光パネルによる自家発電や、県内の水力発電を由来とするクリーンな電力などを調達することで、CO2排出量実質ゼロを達成できました。」とお話しされています。
その言葉からも、脱炭素のパートナー選びの重要性がうかがえるのではないでしょうか。
今後もサントリーさまでは、省エネ活動を継続されながら、現在、Jクレジット制度でオフセットしているLNG由来のCO2(注)に関しても、地域の間伐材を燃料とするバイオマスボイラーを稼働させることで再生可能エネルギーの比率を高めていくそうです。

(注)J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量や、適切な森林管理によるCO2などの吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
本工場では、再生可能エネルギーから創出された環境価値のクレジットを購入して、LNG由来のCO2排出量を実質ゼロとしています。

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