多岐にわたる
大容量蓄電池の活用へ
日本ガイシ株式会社(以下、NGK)さまは、セラミック製品の製造・販売をおこなうグローバル企業であり、電気を絶縁し電線を支える碍子(がいし)や自動車排ガス浄化用セラミックスなどの幅広い製品を世界中で展開しています。
災害時の電力確保や事業継続計画(BCP)対策として、蓄電池の活用が挙げられますが、NGKさまでは、その活用の幅を広げる取り組みとして、「デマンドレスポンス(以下、DR)」への活用をおこなっています。
DRとは、電気が足りなくなる、もしくは余る可能性がある場合に、工場など電気を利用する側で電気の「使う量」をコントロールする取り組みです。電気は使う量に対して、作る量をあわせる必要があり、電気を使う量と作る量のバランスが崩れると停電などのリスクが生じるため、これらを回避する取り組みとしてDRを実施しています。
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NGKさまでは、名古屋・知多・小牧など、複数の事業所に蓄電池を設置しており、2022年1月より中部電力ミライズからの要請を受け、DRの取り組みを開始されました。具体的には、夏季や冬季の電力が足りなくなるタイミングに合わせて、蓄電池に貯まった電気を放出。あらかじめ貯めておいた電気を使用するため、その分電力不足の緩和につなげられます。
合計で21,000kWhと大幅に電力使用量を抑制し、電力不足の緩和に貢献しました。NGKさまが活用されている蓄電池は、大容量かつ長時間の放電が可能な「NAS電池」で、NGKさまが製造しているものを活用。非常災害時などに必要な非常用電力を確保しながら、こうしたDRに対応する形で、蓄電池を有効活用されています。
複数の事業所にまたがる
NAS電池を
ネットワークでつなぎ、
最大限に有効活用
NGKさまでは、元々は停電対策などのためにNAS電池を導入しており、常時はその能力を活かしきれていないと感じていらっしゃったそうです。担当者さまは、「NAS電池の運用価値の向上を図れるとともに、電力不足の緩和などに貢献できることもDR導入の動機となりました」と、導入の経緯を振り返ります。
さらに、「DRの対価により、その分の電気料金を低減できたことに加え、蓄電池を多用途で活用(マルチユース)した事例として、蓄電池の導入を検討されている方々に向けて可能性をアピールできたことは大きなメリットです」と導入後の効果を話してくださいました。
2022年4月からは、中部電力ミライズとともに新たな仕組み作りにも取り組んでいます。
前述のように電気を使う量と作る量のバランスが崩れた際の停電などを回避するために、電気を利用する側で蓄電池などを活用してこのバランスを整える「調整力」が市場で募集され、取引されています。
こうした中で、NGKさまでは小牧事業所と知多事業所のNAS電池をネットワークでつなぎ、一つの発電所かのように見立てて稼働をコントロールする仕組みである「バーチャルパワープラント(VPP)」を構築。両事業所にあるNAS電池を活用し、これにより生み出された調整力を市場へ提供しています。
調整力を市場へ提供するにあたっては、中部電力ミライズが開発した制御システムを導入。このシステムにより、複数拠点の電力使用量をコントロールします。
こうして生まれた調整力を市場へ提供することで、電力システムの安定化の確保に貢献しています。
DRの更なる活用で
再エネの普及拡大に貢献へ
NGKさまは、「NGKグループ環境ビジョン」として、事業活動を通じて「カーボンニュートラル」「循環型社会」「自然との共生」の実現に寄与することを掲げています。2050年までのCO2排出量ネットゼロを目指し、具体的な目標を設定。2013年度比で2025年度に25%削減、2030年度に50%削減、そして2050年度にネットゼロを目標としています。
このロードマップに基づき、4つの戦略を推進。カーボンニュートラル関連製品・サービスの開発と提供、トップダウンでの省エネ強化、技術イノベーションの推進、そして再エネ利用の拡大です。特に再エネ利用の拡大に向けては、国内外の生産拠点への太陽光発電設備の設置を進め、欧州の全製造拠点ではすでに再エネ由来の電力100%調達を実現されています。
現状は、電力が足りなくなる可能性がある時間帯に電力使用量を減らす「下げDR」のみとなっているDRの取り組みについて、再エネの発電量が増え、電力が余っている時間帯に電力使用量を増やす「上げDR」にも対応することを検討されています。具体的には余った電気をNAS電池に充電することで、さらなる再エネの有効活用と普及拡大に貢献したいと意欲的です。さらに今後は、現在2つの事業所でのみ対応しているDRの仕組みを、NAS電池導入済みの他の事業所でも対応する予定だといいます。
2021年度から2023年度にかけて立ち上げた、CO2排出ネット・ゼロプロジェクトにより、カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めてこられたNGKさま。計画の実行に向けた体制が整ったことにより、2024年度に入ってから本プロジェクトは、それぞれのワーキンググループが自立して取り組む体制へ移行し活動を推進中です。
2050年度のネットゼロという目標に向けて、取り組みをさらに拡充されていくことでしょう。