GXコンサルティングサービス
製品品質を担保しようとするとエネルギー消費量が増大するという苦悩
空調を省エネ型に更新すると、投資コストがかかるのが一般的ですが、この投資コスト減と省エネをどう両立させるか、これがナブテスコ株式会社(以下、ナブテスコ)さまのお悩みでした。ナブテスコさまの岐阜工場における主力製品は、航空機の操縦舵面を作動させ飛行姿勢を制御するフライト・コントロール・アクチュエーション・システムで、主要部品の加工精度の確保のために工場内温湿度の管理が重要です。わずかな温度上昇が金属部品の膨張や加工精度の低下を招いたり、湿度の変動が電子部品の機能に影響を与えたりすることもあります。そのため、精密加工時に機械から発生する排熱やオイルミストの対策および微細なサビの抑制が要求され、どうしても空調の消費電力が増加するという特徴があり、工場内環境を維持しながら、消費電力を削減する方法に常々悩まれていました。

工場の温度・湿度を「面」で可視化、
改善の肝は「熱だまり」解消
工場内環境の維持をしながら消費電力を削減するため、ナブテスコさまの岐阜工場では工場内に温度計を複数台設置し、空調の運用方法を見直すことでCO2排出量削減に取り組まれていました。一定量の削減に成功した一方で、脱炭素目標達成に向けては、さらなる削減が必要でした。

課題解決のために、中部電力ミライズでは、工場内の温度分布や風の流れ、熱だまりなどを、温度測定個所の「点」データではなく、連続的な「面」データとして可視化することに取り組みました。というのは、「点」データだけでは空間全体の「面」的な温度分布変化を把握することが難しく、また、計測地点の環境が良くても、作業者のいる場所が必ずしも快適ではない点などが課題だったからです。「面」データの計測にあたり、新たに「MieruTIME 4D」システムを開発。工場内の各エリアまたは垂直方向での温湿度分布や時間帯による特徴を一目で把握できるようになったのですが、この計測で見つかったのが、工場上部にある大きな「熱だまり」でした。
ここで着目したのが、外気の吸い込みと排気のバランスでした。熱だまりを解消するためには、排気に偏っていた空気の流れを変えることが必要と考え、この解決策として、「給気口の増設」を実施。流体シミュレーションを解析して、理論上の最適台数と設置位置を想定したうえで、実現場での風量・風向き調整などの試行錯誤を重ねることで、最適な給気口配置も実現しました。
こうした取り組みにより、工場に必要な空調量を減らすことができ、結果として過剰なスペックの空調機導入を回避。導入コスト削減と省エネを両立することができました。加えて、作業者の快適性向上にもつながっています。
改善を進める中で、リアルタイムに温湿度状況を確認したいという要望があったことから、システムに改良を加え、温湿度状況をクラウド上で「リアルタイム」に「見える化」するシステムを開発し、2022年7月より導入いただきました。改善施策の仮説立てから効果検証、最適解の導出、運用変更に向けた意思決定、運用変更まで長い時間が必要になることが一般的ですが、ナブテスコさまの岐阜工場では、本システムの活用により、これらの工程が迅速化。スピーディな改善活動を展開されております。
最適な空調更新による、
さらなる脱炭素化
ナブテスコさまの岐阜工場は設備更新にあたり、もう一つ課題を抱えられていました。HCFC(R22)冷媒の全廃に伴う空調更新を求められる中で、更新が必要な対象設備が多岐に渡り、かつ過去の増改築の影響で、設備の系統が複雑化していたことで、現状の把握に必要以上に労力がかかるなど、更新計画策定が困難な状況でした。

この課題についても、ナブテスコさまの岐阜工場と中部電力ミライズが一緒になって取り組み、乗り越えることに成功しました。
「空調更新1つ取っても検討項目は多岐にわたり、単純に設備更新するのではなく、外気を取り入れる方式や多機能化が進むルームエアコンの採用など、多角的な観点から提案してもらえました。また運用改善による空調負荷最小化のアドバイスなどをもらえ、非常に助かっています」と振り返る、ナブテスコ岐阜工場の担当者さま。「設備の要・不要、機種選定となると社内の対応だけでは困難でした。中部電力ミライズがメーカー調整も含め一貫してサポートしてくれたおかげで予定通り完了することができました」と評価してくださいました。
計画策定から実行に至るまで幅広く支援をおこなうことで、短期間での更新を実現。本更新により空調にかかるエネルギー使用量は58%、CO2排出量は179トンの削減を見込んでいます。
ナブテスコさまは省エネ活動をグローバルに推進し、各生産拠点における高効率な設備の導入を進め、工場建屋の新築・建て替えの際には、最新の環境技術を積極的に採用しています。さらに太陽光発電をはじめとするさまざまな創エネ活動に加え、再エネ調達(証書購入)も実施するなど、気候変動に関する包括的な取り組みを実施しており、CDP(注1)から「気候変動」の分野において9年連続で最高評価であるAリスト評価を獲得しています。(2025年度現在)
航空機器以外にも鉄道車両用ブレーキで国内市場シェア約50%、精密減速機の分野では中大型産業用ロボット関節用途での世界シェア60%と各事業分野のスペシャリストとして、2030年までにCO2排出量を63%削減、2050年までに100%削減(カーボンフリー実現)という目標(基準年:2015年)を掲げ、地域社会の脱炭素化を率先していく予定です。その実現に向け、中部電力ミライズもナブテスコさまのパートナーとして今後も幅広くサポートしてまいります。
(注1)CDP:英国を拠点に活動する非政府組織(NGO)。企業に対し気候変動などに対する取り組みに関する情報を管理するシステムを運営している。
(注2)最高評価:「気候変動」分野2022年度:全回答日本企業数1,101社中、最高評価は75社(7%)「水」分野2022年度:全回答日本企業数261社中、最高評価は35社(13%)。
空調エネルギー使用量58%削減に貢献した
中部電力ミライズのGXコンサルティングサービスとは?
ナブテスコさまをはじめとする全国のお客さまに対して、当社はカーボンニュートラル実現を効果的に支援するGXコンサルティングサービスを提供しています。当サービスでは、お客さまの新設・改修プロジェクトにおいて、当社のソリューションノウハウを最大限駆使し、計画の立案から実行までをトータル支援することで、お客さまの環境目標の確実な達成に貢献します。





