省エネに取り組むことで経費削減を図りたい。しかし「生産設備を止めて節電する」といった、生産活動に負担をかける方法は避けたい……こうしたジレンマに悩まされている企業さまも多いのではないでしょうか。今回は「デマンドレスポンスの指定日時をノー残業デーにする」というユニークな発想で、このジレンマを解消した事例をご紹介します。
当事例のお客さまは、社内で数百人の従業員を抱える大規模工場です。昨今の電力事情を取り巻く情勢の中で省エネに取り組むことで経費削減を図りたい、しかし「従業員の省エネ・節電に対する意識が希薄」という問題をお持ちでした。また、 「時間外労働の削減」に苦心しているというお話も聞いていました。 時間外労働が多い状況で、改善策もなかなか見出せず、働き方の面でもコスト面でも課題になっていたのです。
そこで、当社から、2点の課題解決策として「デマンドレスポンス契約」を提案しました。
「デマンドレスポンス」は、電力需給状況が厳しくなると見込まれる日があった場合、数日前にお客さまへ連絡し、その日、その時間帯の電力使用を抑えていただく代わりに電気料金を割引するといった契約です。
1日の中での電力需給状況は、ひと昔前ですと午後1時~2時といった時間帯が最もひっ迫していました。しかし近年は太陽光発電が普及し始めて、太陽光発電の出力が落ちる夕方以降の時間帯で電力需給がひっ迫するようになってきています。また、冬季においては夕方以降の時間帯に加え、太陽光が発電する前の朝方も電力需給がひっ迫することが懸念されております。
夕方以降の時間帯での電力需要の抑制には、「時間外労働の削減」が効いてきます。
電力需要の抑制というと、工場そのものの稼働時間を短縮したり生産にかかる電力負荷を抑えたりすることを考えがちですが、実は工場内にある経理や人事などの間接部門でも、照明・空調などにかかる電力が発生しています。
そこで「ノー残業デーを設定する」ことで、間接部門での時間外労働を削減しつつ、電力使用も抑えるというわけです。
この取り組みは、従業員の省エネや節電・コスト削減に対する意識づけにもなりました。時間外労働を抑えるだけでなく、この日に合わせてフレックス勤務を活用するなど、従業員の皆さまの働き方も含めた意識改革が起きているようです。
工夫次第でできることがある
今回の施策は生産設備を止めなくとも、手軽に取り組めるところが大きな特徴です。
また「ノー残業デーは毎週〇曜日」とすでに決まった形で運用をされている場合は、「〇曜日にデマンドレスポンスを依頼された時だけ協力します」ということも可能です。無理のない範囲で運用できますし、効果が見込めれば少しずつ拡大することもできます。お客さまに合うやり方でまず始めてみてはいかがでしょうか。
今回デマンドレスポンスを活用していただいたことで、単純に電力使用を抑えるだけではなく、時間外労働の削減、従業員の省エネや節電・コスト削減に対する意識づけなどにもつながる結果となりました。
生産設備を見直すといった決まりきったやり方ではなく、視点を変えて少し工夫をすることで節電・省エネにつながることもあります。まずは身近なところから、ぜひ取り組んでみてください。